Friendly Society vol.2

PHOTO:JUNJI HATA / VIDEO:ROBIN FURUYA / HAIR & MAKE:HIROKI Yoshimori

これまでに、さまざまな現場を訪れ、たくさんの社会貢献活動に携わってきた友近久美子。そんな彼女が、各分野のスペシャリストたちと日本の社会課題や未来予想図について語り合う「Friendly Society」。第1回目は、『放課後NPOアフタースクール』代表理事 平岩国泰氏をゲストに迎え、「放課後という時間の価値」について考える。

#002 「企業とスポーツ界におけるダイバーシティ」

Kumiko Tomochika × Naoko Imoto

Tomochika’s Memoir

File 002「井本直歩子さんから学ぶ、未来のダイバーシティ」

2023年1月21日、井本直歩子さんが代表理事を務める『一般社団法人SDGs in Sports』が本格的な活動を開始しました。

「女性リーダーサポートネットワーク - Think Together, Change Together (TTCT)」と題されたプログラムは、スポーツ界の女性リーダーたちが組織のガバナンスについて包括的に学ぶ機会を提供するもの。これから約半年をかけて、各分野からトップランナーを招き、講義や個別メンタリングなどを通じて、参加者が自分の役割を見つけることを後押ししていくそうです。

はたして、本当の意味でのジェンダー平等なスポーツ界とは、どうやったら作れるのでしょうか。

私もここ数年、SDGsやESGといった観点で、多くの企業やNPOの人たちと時間を共有し、さまざまな考え方に触れてきました。会社としてもスポーツ界の新たなガバナンス構築を目指す個人や団体をサポートしていますが日進月歩。いまどの行程にいるのかを見失ってしまうこともしばしばあります。

それだけに選手としてオリンピックを経験された井本さんの言葉には、すごく重みを感じるのです。

彼女との出会いは2022年の秋。「スポーツ界のガバナンスにおける多様性」や「ジェンダー(平等)の実現」、また「気候変動対策」といった、幅広い課題意識やその解決に向けたアクションについてお話しを伺う機会があり、大きな感銘を受けました。

井本さんは、現役時代、海外遠征を通して先進国と発展途上国の差を痛感し、引退後は国連(ユニセフ)職員として、発展途上国の教育支援に従事しながら、日本のダイバーシティへの意識の遅れを直に体感されてきました。

近年のオリンピックでは、女性アスリートがほぼ半数を占め、競技で活躍する環境は十分に整ってきています。それでも団体や協会の運営、トップ層に目を向けると、まだまだ男性の比率が多いというのが実状です。井本さんは『SDGs in Sports』を通して、ダイバーシティの重要性の理解とジェンダー平等の意識改革、そして女性リーダー育成を進めています。

これはスポーツ界のみならず、日本の企業、さらには社会全体の問題でもあります。ダイバーシティへの理解、年齢、性別、人種、国籍、性的指向などに対する価値観を深めるには、膨大な時間がかかると思います。それでも理解しようと努力することは大切です。まずは「知ること」から始めなければ、何も変わりません。

ここ数年、日本の大企業におけるダイバーシティへの理解やガバナンス体制の整備は進んでいるとは感じますが、社員ひとり一人に納得してもらう形で浸透しているかというと、まだまだ疑問を感じざるをえません。政治家による差別的発言などが、たびたび報道されたりする風潮を見ると、やはり国内での理解度はかなり低いように思えます。

一方、私の身近では、学校教育が随分と変わってきているという印象を受け始めています。小さな子どもでも「SDGs」や「ダイバーシティ」という言葉を知っていたりもします。現に4歳の娘が、”It’s OK to be different (人と違ってもいいんだよ)“ と、教えてくれた時には感動を覚えました。

未来を担う子どもたちによって、将来の日本は現状とは比較にならないほどにダイバーシティの実現がされていることが期待できます。だからこそ、いま私たちがその責任を負わなければなりません。伝えていく大人が、物ごとを把握せず、世界から取り残されてはいけないのです。

POD Corporationは、2022年12月に『ESG College』というコミュニティサロンを立ち上げました。私も事務局のひとりとして、多くの企業担当者と課題解決に向け、日々試行錯誤を繰り返しています。ESGのとくにS(社会)の理解と取り組みを広めていく活動を積極的に行っていますが、今後も井本さんの活動からさまざまな教訓をいただくことになると確信しています。

◯ 一般社団法人SDGs in SPORTS

社会貢献、ジェンダー平等、環境・気候変動対策のために活動するアスリート、指導者やスポーツ関係者と連携し、輪を広げることを目指す団体。

● Profile

一般社団法人SDGs in Sports代表理事 井本直歩子(いもと なおこ)

元競泳選手で1996年アトランタオリンピック日本代表。近畿大学附属高等学校、慶應義塾大学総合政策学部卒業。元国連児童基金教育専門官。2009年ニューズウィークが選ぶ「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた。2020年1月に日本財団主催の「HEROs AWARD 2019」を受賞。

Profile

友近 久美子(ともちか くみこ)/POD Corporation Social Branding Director

2007年にゴールドマン・サックス証券(以下GS)にて社会貢献担当のキャリアを開始して以来、企業の社会課題解決への参画やじ中間支援的役割に使命感を持つ。専門的知識とスキル構築のためGS在籍中に立教大学大学院独立研究科21世紀社会デザイン研究科での研究で修士課程を修了。2021年よりPOD Corporationに参画し、企業の地方創生案件、社会貢献案件等の立ち上げや企画に携わり、とくに社員エンゲージメントを専門とする。「職場の基礎代謝ファシリテーター」資格保持者。