「スポーツの魅力」 名越慈夢
西海岸で学んだこと
私は競技者ではない。それでも「スポーツには社会を変える力がある」と思っている。これまでのキャリアを捨て、単身サンディエゴ州立大学のスポーツMBAに留学をしたのは、スポーツをビジネスとして学ぶためだ。
北米にはMLB、NBA、NFL、NHLという4大プロスポーツがある。それぞれが地元(フランチャイズ)に根差し、シーズンが始まると、まるで自らの化身のように魂を込め「おらがチーム」を応援する。
サンディエゴには、MLBの『パドレス』はもちろんのこと、アイスホッケーの『ガルズ』やサッカーの『ロイヤルSC』など、さまざまなプロスポーツチームが存在している。歓喜や失意を抱えながら、年間を通して熱く推し活ができるのは、ビジネスとしての興行スケジュールが確立されているからだ。
いっぽうでスポーツの楽しみ方は、体を動かすことにもある。
西海岸特有の乾いた空気と暖かい偏西風が心地よい海岸線では、ランニングやサーフィン、そしてスケートボードを楽しむ人がたくさんいる。これが日常だ。
ふと思い返してみる。
日本においてスポーツをするということは、たいていの場合は重い腰を上げることから始まる。歩く、走る以外は、まず施設を探すことから始めなければならないからだ。スポーツは皆のためのものだが、日本では一部の人だけのものになってしまっているのかもしれない。
競技の好みは人それぞれ。それでもアメリカでは子どもから大人まで、まずだれもが気軽に楽しめる環境を整備することに重きを置く。なぜなら、人種や言葉、そして宗教が違う広大なこの地で、スポーツはコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしているからだ。
留学期間中にスポーツをビジネスとしてだけでなく、カルチャーとして実感できたことは大きかった。
名越慈夢(なごし じむ)
幼少期からバスケットボールに情熱を捧げ、スポーツの虜に。新卒で株式会社ワコールに入社し、法人営業として関東圏の百貨店を担当。その後、旅行会社を立ち上げ4年間経営。2022年、一念発起して単身でサンディエゴ州立大学のスポーツMBAに留学。帰国後POD株式会社に参画。企業とアスリートを結びつける「スポーツスポンサーシップ」の構築や「スポーツホスピタリティ」の事業化に従事。