Friendly Society

PHOTO:JUNJI HATA / VIDEO:ROBIN FURUYA / HAIR & MAKE:HIROKI Yoshimori

これまでに、さまざまな現場を訪れ、たくさんの社会貢献活動に携わってきた友近久美子。そんな彼女が、各分野のスペシャリストたちと日本の社会課題や未来予想図について語り合う「Friendly Society」。第1回目は、『放課後NPOアフタースクール』代表理事 平岩国泰氏をゲストに迎え、「放課後という時間の価値」について考える。

#001 「放課後という時間の価値」

Kumiko Tomochika × Kuniyasu Hiraiwa

Tomochika’s Memoir

File 001「平岩国泰さんの想い」

2007年。前職企業で社会貢献の担当者となった私は、日本における社会課題を学ぶため、さまざまなNPO団体の活動場所に足を運び、精力的に見学していました。

そのなかのひとつに、平岩国泰さんが代表理事を務める『放課後NPOアフタースクール』がありました。

当時の平岩さんに、NPOを立ち上げた思いを聞くと、「子どもに関わる事件や事故は、放課後に起こることが大半。そんな状況を変えて、子どもたちを守りたい」という答えが返ってきました。

詳しく話を聞いていくと、子どもに関する事件の60〜70パーセントが、放課後である14〜18時の間に起こっている。この事実に私は大きなショックを受け、彼らの活動意義の重要性を痛感しました。

『放課後NPOアフタースクール』の活動は多岐にわたります。そのなかのひとつに「市民先生」という言葉があります。「市民先生」とは、自分たちの趣味や特技を活かして、子どもたちにさまざまな体験を提供してくれる地域住民や専門家のこと。子どもたちの安全を守ってくれる存在でもあり、「地域で子どもを育てる」仕組みでもあります。

経済的に余裕がない家庭の子どもたちは、一般的に体験機会が少ないと言われています。実際に「海に行ったことがない」 「動物園に行ったことがない」 という声を聞いたことがありますが、見たり聞いたり、体験したりすることがないと、子どもたちは、物事に対するイメージを持つことすら難しいでしょう。

新しい体験をすることで感性が育ち、それが学びとなっていきます。経済的な格差は、そのまま教育格差となります。残念ながらいまの日本社会においては、その差はじわじわと広がっているのが現状です。日本の子どもたちは、著しく自己肯定感が低いとも言われています。だからこそ、失敗や成功体験が得られる場を提供することは、とても重要なのです。

たくさんの大人が「市民先生」として、子どもたちに体験を提供することは、彼らの心を育てると同時に、教育格差を減らし、幸福度を上げることにつながっていきます。

大人たちにとっても素晴らしい体験です。これまでの趣味や特技を活かして、子どもたちの喜ぶ姿を見ることができ、さらには元気をもらえる。

なんて美しい循環だろうと思います。

私自身も活動に参加してきましたが、子どもたちの喜ぶ姿はもちろんのこと、それ以上に参加した大人の楽しそうな顔が、とても印象に残っています。

『放課後NPOアフタースクール』は、企業や個人を巻き込みながら、成長を続けてきました。知り合った当初は、平岩さん自らが、プログラムの進行役となり運営を行なっていました。それがこの10年余りで、活動の規模は全国区に広がり、300名以上のスタッフがいて、毎年のべ20万人以上の子どもたちに、大切なプログラムを届けるというスケールになっています。

日本の将来を担う子どもたちを守るのは、私たち大人の役目であり、健やかな成長は日本の将来を守ることに繋がります。企業の業績には直接関係がないように思えるかもしれませんが、長期的な視点からも、企業の皆さまには『放課後NPOアフタースクール』の活動を真摯に応援してほしいと願っています。

活動を支援することは、多くのメリットを生み出します。社員は社会課題に取り組む会社に対しての誇りを持ち、参加することによって多くの気づきや学びを得ます。また、社会に還元しながら、社員の人間力を上げる教育的な効果も期待できるはずです。社員の成長と社会還元を同時に実現できるプログラムを提供している『放課後NPOアフタースクール』。企業で働く親たちにとっても「放課後という時間の価値」は、決して他人事ではないはずです。だからこそ、私はいろいろな企業に、子どもたちの放課後に関心を持ってもらいたいと願っています。

◯ 『放課後NPOアフタースクール』

「放課後はゴールデンタイム」をビジョンに小学生の放課後改革に挑戦し、安全・安心な場と本物・多様な体験が両立する「アフタースクール」を展開。学校施設を活用し、地域や行政・企業など多様なステークホルダーと連携しながら、社会全体で子どもたちを育てる放課後を全国で実現するために拠点運営と企画開発を行なっています。アフタースクール運営チームと、モデル開発チームの専門性と連携を強化し、子どもたちのためのより豊かな放課後の実現に向けたチャレンジを続けていきます。グッドデザイン賞4回他各種受賞。

Profile

平岩 国泰(ひらいわ くにやす)/放課後NPOアフタースクール代表理事

1974年東京都生まれ。1996年慶應義塾大学経済学部卒業。株式会社丸井入社、経営企画・人事などを担当。2004年長女の誕生をきっかけに、放課後NPOアフタースクールの活動開始。グッドデザイン賞(4回受賞)他各種受賞。13年より文部科学省中央教育審議会専門委員。2017年より渋谷区教育委員。19年より新渡戸文化学園理事長。未来の学校と放課後づくりに挑む。

Profile

友近 久美子(ともちか くみこ)/POD Corporation Social Branding Director

2007年にゴールドマン・サックス証券(以下GS)にて社会貢献担当のキャリアを開始して以来、企業の社会課題解決への参画や中間支援的役割に使命感を持つ。専門的知識とスキル構築のためGS在籍中に立教大学大学院独立研究科21世紀社会デザイン研究科での研究で修士課程を修了。21年よりPOD Corporationに参画し、企業の地方創生案件、社会貢献案件等の立ち上げや企画に携わり、特に社員エンゲージメントを専門とする。