All or Nothing ~ノジマ相模原ライズの憂鬱~ #001

ノジマ相模原ライズの憂鬱

#001 ノジマ相模原ライズと日本アメリカンフットボール界が抱える11の課題

米スポーツ界で最大の人気を誇るNFLは、いまや年間140億ドルともいわれる巨大マーケットに成長している。一方、日本におけるアメリカンフットボールといえば、いまだマイナー競技の域を抜け出せていない。実業団とクラブチームというさまざまな経営状態からなるXリーグには、X1Superに12、X2Areaに8 、二部リーグ以降に35チームが所属。運営は親会社、もしくは各チームのスポンサー企業との契約で成り立っていて、選手のほとんどが社会人での構成となっている。

X1Superに所属するノジマ相模原ライズは、企業チームから生まれ変わった地域密着型のクラブチーム。ゼネラルマネージャーを務める石井光暢氏に、運営サイドの裏側から見えてくるチームの課題やXリーグの未来像について語ってもらった。

「All or Nothing」は、ノジマ相模原ライズを通じて、課題の解決策や新しい方法論を考えていく連載企画。

アメフトの裏側を知れば、アメフトがもっと楽しくなる!

第1回目は、ノジマ相模原ライズと日本アメフト界が抱える11の課題

課題・其の一 「競技人口の減少」

いまスポーツ界全般が置かれている状況ですが、コロナ禍で子どもたちのスポーツ離れがものすごく進んでいます。我々にも例外なくその傾向は顕著に表れています。アメフトの日本における競技人口は約1万5000人。この数字には、当事者としてものすごく危機意識を感じていて、まずはファンになってもらうために、チームとしてどんなアプローチをするのか…。

チーム名にノジマ相模原ライズという地名を冠しているので、やはり地域の方に認知していただいて、子どもたちや地元の方々に喜んでもらえるようなチームになりたいと頑張っています。ただフィジカルなイベントなどができない状況下においては、どんな策があるのか試行錯誤が続いています。

課題・其の二「スポンサーとのエンゲージ」

スポンサー集めに関しては、露出という点からしてものすごく難しさを感じています。既存のスポンサーとのエンゲージはもちろんのこと、これからの関係性としては、ただご支援をいただくだけじゃいけないことを考えています。僕らとスポンサーが協力して、地域に対して何ができるのか? もっと深く考え、より強固なものを築いていかなければいけないと痛感しています。

課題・其の三「グローバル化」

2028年のロサンゼルスオリンピックで、フラッグフットボールが公開競技に採用されると噂されています。逆算して、いまから協会とそれぞれのチームがひとつとなったうえでできること、意識統一をして活動していかなきゃいけない。

日本アメリカンフットボールアソシエーションが、代表をロサンゼルスに送り込もうということで活動していますが、フラッグフットボールとアメリカンフットボールは現状では決してイコールではない。もっと突き詰めて考えていかないといけない課題だと考えています。

課題・其の四「裾野の拡大」

フラッグフットボールは、競技の入口としては非常に魅力的なコンテンツです。チーム単体としては、4歳からお預かりして、小学生まではフラッグをやってもらうという活動をしています。

そして小学4年生の時点で、アメリカンフットボールに転向するか、ほかのスポーツと掛け持つかという選択をしていただいて、中学を卒業するまでRISEの下部組織、もしくは有志のジュニアチームで活動してもらう。地道ながらもこういった活動で裾野の拡大を目指しています。

課題・其の五「認知度の向上」

日本社会人アメリカンフットボール協会には約50のチームが加盟しています。そのなかには、実業団が3つあり、そのほかはクラブチームという図式です。クラブチーム共通の悩みとしては、財政的なところ。

認知度を上げ、僕らを知ってもらいたい。知ってもらってただ支援してもらうだけではなく、僕らも何かを還元して、お互いがウィンウィンになれるような仕組みを作っていかなければならない。それには、まずXリーグを興行として成り立たせていくこと。

課題・其の六「ハード面」

場所と仲間と時間は非常に重要です。場所とはスタジアムのこと。陸上競技場ではなくフットボールスタジアムが欲しい。ただ僕らのチームが単独で持つということではなく、自治体と意見交換をして、市民が有効活用できる新しくスタジアムを新しく作ること。

また仲間。こういう思いに賛同して、協力してくれる仲間をどれだけ増やせるか。そのなかでどれだけリーダーシップが取れるか。

課題・其の七「地域との関係性」

社会福祉とか子どもの教育など、自治体として優先順位を付けるなかで、我々は選ばれる存在にならなきゃいけない。

単体としてではなく、相模原市内にあるチームが手を取り合って、スポーツは文化で社会にはなくてはならないものだよ、ということを訴えていきたい。いろいろな社会課題の解決に繋がるような、スポーツの方程式はまだ見えてないですが、そんなことができるようにならないと自治体は動かないというのは感じています。

課題・其の八「リクルーティング」

毎シーズン、新人団選手の勧誘には非常に苦しい戦いを強いられています。そもそも相模原ってどこ? みたいな話から始めなきゃならない。東京からそんなに遠くないよという作業。

国内のトップリーグに所属している限り、大学生に見てもらいいし、憧れの存在になりたい。「入団したいです」と言ってもらえる魅力あるチームにしなきゃいけない。いまのチームには元プロ野球選手とか、いろんなバックボーンを持った選手が所属しています。

課題・其の九「子どもたちの選択肢」

これから日本はどんどん少子化になります。だからひとつの競技で子どもを取り合うよりは、好きなスポーツを、たくさんやれるような環境を整えるっていうことが大切なんじゃないかと思います。アメリカみたいにシーズンごとにいろいろやるっていうような考え方。

月水金は野球、火木はフットボール、週末はサッカーとか。やり方はいろいろ工夫すればできると思います。それにはいろいろなところが持っている既得権益をどうするか、という話も出てくるでしょう。

フットボールは本当に多様性にあふれたスポーツなので、足が速くないとか、痩せていてもできるポジションは必ずある。子どもたちの選択肢のひとつとして提供してあげたいなっていう思いが強くあります。

課題・其の十「資金繰り」

Xリーグ自身が、加盟するチームと同じ方向を向かなきゃいけない。ベクトルが違うと絶対に良くならない。誰がリーダーシップを取るのか。課題は資金って言いましたけど、自分たちがやるべきことをやれば、ファンの方、スポンサーの方、地域の方、それぞれのエンゲージメントを高めることでお金集まってくる。そういう仕組みを作りたい。

すべてのエンゲージメントを高めるっていうことは、常に抱えている課題。チーム運営の現時点でのゴールは、サステナブルに運営ができること。いまは大口のスポンサーさんが離れてしまえば、チームが成り立たなくなってしまう。それはサステナブルなのでしょうか? と考えたときに、そうではないと思うので、身の丈に合った経営するとか。

スポンサー頼みのチーム運営から脱却してサステナブルな球団経営ができるような状況を、リーグ全体でも共有していきたい。

課題・其の十一「アメフトの未来像」

XリーグをNFLのリクルーティング・マーケットにしようという人もいれば、子どもたちの海外挑戦を後押しするような場にしようという人もいる。どちらも否定はしないですが、まずは国内のリーグ、チームを盛り上げること。あとはその後に派生ができることだと思っています。1、2年ではできないと思いますが、5年後ぐらいには、加盟するすべてのチームで健全な運営ができて、公園でフットボールをしている子どもたちがいっぱいいるようになれば嬉しい。

To Be Continued