All or Nothing

ノジマ相模原ライズの憂鬱

X1Superに所属するノジマ相模原ライズは、企業チームから生まれ変わった地域密着型のクラブチームだ。ゼネラルマネージャーを務める石井光暢氏が、運営サイドの裏側から見えてくるチームの課題やXリーグの未来像について語る。「All or Nothing」は、日本のアメリカンフットボール界が抱える課題の解決策に対して、新しい方法論を考えていく連載企画。

#004 数字で見るアメフトの魅力

アメフトは数字のスポーツだ。豪快なタッチダウンパスも空間を切り裂くようなカットバックも、スタッツがあることでより際立ってくる。露出が少なく競技に対する知識がない日本人にとっては、難解ともいえるルールも数字の意味を理解するだけで、アメフトの魅力が倍増するはずだ。参考までにNFLのビジネスにおける数字も一部羅列してみた。そこから見えてくるXリーグが進むべき未来像とは。

1stダウン  

「ファーストダウン」。アメフトでもっとも耳にするワードだ。攻撃側には4回の攻撃権が与えられ、そのうちで合計10ヤード(9.14m)進むと「ファーストダウン」となり、再度4回の攻撃権を得ることができる。アプローチはパスとランの2種類が主で、「パス失敗」もしくは「ボールを持っている選手がタックルされて止まる」と1回の攻撃が終了する。ファーストダウンを獲得しながらながら相手陣地のエンドゾーンまで到達できればタッチダウン(得点)となる。

4thダウン

「フォースダウン」。アメフトにおいて4回目の攻撃の選択は、勝敗におけるとても重要なファクターとなる。

【攻撃における二者択一】

・パント

4回目(実質は3回目)の攻撃までにファーストダウンをとれなかった場合は、相手にとって都合の良いポジションから攻撃を始められてしまうため、4回目の攻撃権を放棄して陣地回復用のキック、パントを行う。パントでは、オフェンス側はパント用のスペシャル・チームがキックオフ同様、相手陣内めがけてボールを蹴り、ディフェンス側もパント・リターン用のスペシャル・チームがボールを少しでも前に進めようとする。

・4thダウンギャンブル繰り返しになるが、アメフトでは4回の攻撃権の中で10ヤード以上の陣地を獲得しないと攻守交代となる。しかし4回目の攻撃で「4thダウンの残りヤードがほんのわずか」、10ヤードを超えられる(であろう)場合にギャンブルを選択することもある。成功するとファーストダウンを獲得し、さらに4回の攻撃権を得ることができる。

100ヤード

アメフトのフィールドは、全長100ヤード(91.4メートル)。自軍エンドゾーンから攻撃を始め、単純に10ヤードずつ進んだと仮定した場合、10回目の1stダウン獲得で相手エンドゾーンに辿り着く計算となる。ちなみに幅は53 1/3ヤード(48.8メートル)

【ひと口メモ】

パスを投げるQB(クォーターバック)には、100ヤード以上の遠投が可能な選手も多数存在する。NFLの2000年以降の記録をヒモ解いてみると、99ヤードパスを投げた記録が9件。 一発逆転の要素もアメフトの魅力となっている。 

11人 

アメフトはファーストダウンにつき1チーム11人でプレイする。選手の交替は自由で、いちどベンチに下がった選手も試合に戻ることができる。NFLでは1チーム53人まで選手をロースター登録し、オフェンス、ディフェンス、スペシャルチームなど、状況によって出場させる選手を使い分けている。ちなみに1試合に出場できるのは45人まで。

35ヤード 

キックオフチームのキッカーが、自陣35ヤードから相手陣深く狙ってボールを蹴ってゲームがスタートする。リターンチームはそのキックされたボールをキックオフリターナーがキャッチして、陣地回復のためにボールを持って走る。リターナーがキックオフチームのスペシャルチームプレイヤーに止められた地点でプレイは終了となり、そこからリターンチームがオフェンスを開始する。

12分×4Q

試合は1クォーター12分制を計4回行い48分間で勝敗を決する(同点の場合はVゴール方式のオーバータイムに突入)。第1Q終了時、第3Q終了時は、両チームの陣地が入れ替わり、プレイは第1Q、第3Qが終了した地点からそのまま継続して行われる。第2Q終了(前半終了後)ではプレイがリセットされ、第3Q開始(後半開始時)は、試合開始とは逆のチームのキックオフにより再開する。

【ひと口メモ】

1クォーター

日本の大学生、Xリーグは12分

アメリカの大学とNFLは15分

80km

クォーターバックが投げるおよその平均球速。NFLには90km平均の選手も多数存在する。2008〜2020年に行われたコンバインのデータからピックアップすると、最速はバッファロービルズのQBジョシュ・アレンが投げた99.2㎞。

34km

NFLのトップランニングバックの走る速度。サッカーにおける最高値は、クリスチャン・ベイルの39.9km。およそ7キロにもなる防具をつけてこのスピードは驚き。

1400回転

フィールドゴールで蹴られたボールの回転数。1秒当たりの回転数は23となる。野球と比べてみると、佐々木朗希投手(千葉ロッテ)のストレート平均回転数は2480(平均球速158.3km/h)。ちなみにMLBのチェンジアップ平均回転数は1700~1800。

6点

タッチダウンで獲得する点数。ボールの先端が相手のゴールラインを通過した時点で得られる。走ってボールをエンドゾーン内に持ち込む、エンドゾーン内でパスを受け取ることでタッチダウンとなる。また、ボールを持っている選手が落としたボールを相手のエンドゾーン内で押さえてもリカバータッチダウンとなる。タッチダウンが成功すると、得点したチームに自動的にエクストラ・ポイント、もしくはツーポイント・コンバージョンで追加点を狙えるチャンスが与えられる。

3点

フィールド・ゴール成功で獲得する得点。オフェンスが相手エンドゾーンに近づいているが、第4ダウンを迎えてしまった場合に選択される。キックしたボールがエンドゾーン後方にある、ゴールポストの枠内を通過すれば3点が与えられる。

【ひと口メモ】

フィールド・ゴールを失敗すると、相手チームはボールが置かれていた地点から攻撃を始められるため、キックが成功する確率が高いと判断される、相手陣内の40ヤード以内まで攻め込んでいる場合にフィールド・ゴールを選択するケースが多い。

2点

・ツーポイント・コンバージョン

タッチダウン後、オフェンスチームがツーポイント・コンバージョンを成功した際に獲得する得点。2ヤード地点からの攻撃となり、タッチダウンと同様にパスかランでボールが相手ゴールラインを超えれば2点が与えられる。

・セイフティ

自殺点。セイフティはオフェンスでボールを持った選手が、自陣のエンドゾーン内でタックルされて起こる場合が多い。セイフティになると、セイフティを取られたチームのキックで試合を再開する。

1点

タッチダウン後、オフェンスチームがエクストラ・ポイントを成功した際に獲得する得点。ボールは15ヤード地点におかれ、キックしたボールがゴールポストの枠内を通過すれば1点が与えられる。

18フィート6インチ 

両エンドライン後方に位置する、Y字型バーのポスト間幅。ゴールポストのサイズは、横バーが地上10フィート(3.05m)、ポスト間の距離は18フィート6インチ(5.64m)、ポストの高さはバーから35フィート(10.67m)。フィールドゴールやポイント・アフター・タッチダウン時にキックがポストの間をノーバウンドで通過すると、成功とみなされ加点される。

【ひと口メモ】 

フィールドゴールのキックは、最短距離17ヤード(エンドゾーン10ヤード+スクリメージからホルダーの距離約7ヤード)。キッカーのスキル次第でフィールドゴールが狙える距離は異なるが、NFLでは敵陣35ヤードラインが成功の目安とされている。

・成功率

フィールドゴールは選手のスキルによって大きく成功率が異なる。敵陣30ヤード以内からのキックであれば9割以上成功しているのに対して、30ヤードを超えると選手によって成功率が大きく下がってくる。

・最長記録

過去最長距離のフィールドゴール記録は、1976年の大学アメフトOve Johanssonによる69ヤード。NFLでは2021年にJustin Tuckerによって記録された66ヤードフィールドゴールが最長記録。

50ヤード・ハーフ

フィールドの全長100ヤードを中央で二分割するライン。ニ分割されたエリアが、それぞれのチームの陣地となる。フィールド上の数字は、この中央の50ヤードラインを境にエンドゴールラインに近づくにつれて、40、30、20、10ヤードと小さくなっていく。この数字を知っておくと敵陣に攻め込んだ時の位置がわかるようになり、試合がより楽しめる。

600億円

NFLの頂上決戦である『スーパーボウル』の経済効果は、日本円にして600億円を超えるといわれている。試合の前後からお祭りのように活気づくスポーツイベントは、1日の試合としては類を見ないほどの規模を誇る。

8,625,000

『スーパーボウル』のチケット料金。一番安いもので6,600USドル(約75万9000円)、最大7万5000ドル(約862万5000円)。ちなみに2021年のNPB日本シリーズはエクセレントシート19,800円。甲子園ボウルにおいては、アルプス特別指定席(1塁側アルプス)5,500円。Xリーグの当日券は2,300円也。

17,604,430

NFLの年間観客動員数。この数字からもスポーツ界における最大のマーケットビジネスがあることがわかる。

【ひと口メモ】

スポーツ・リーグ別観客動員数

1位 NFL
年間合計1760万6643人(1試合平均6万8776人)
2位 ブンデスリーガ
年間合計1331万1136人(1試合平均4万3500人)
3位 インブランドプレミアリーグ
年間合計1394万3910人(1試合平均3万6695人)
4位 オーストラリアフットボールリーグ
年間合計640万4569人(1試合平均3万2346人)
5位 MLB
年間合計7373万9622人(1試合平均3万346人)
6位 IPL(インドクリケットリーグ)
年間合計155万8664人(1試合平均2万7833人)
7位 ラ・リーガ(スペインサッカーリーグ)
年間合計1017万1062人(1試合平均2万6766人)
8位 NPB
年間合計2285万9351人(1試合平均2万6458人)
9位 CFL(カナダのカナディアンフットボールリーグ)
年間合計204万8164人(1試合平均2万5286人)
10位 セリエA
年間合計886万6274人(1試合平均2万3332人)

NBAは年間合計2190万人で14位。Jリーグは年間合計527万で16位に位置している。

425グラム

アメフトのボールスペック

重さ:397~425グラム 

周囲の長さ(長い方):79.4cm~81.9cm
周囲の長さ(短い方):51.9cm~53.1cm
レース:レース必須で長さは7.6cm~8.3cm
形:両端の丸みはラグビーよりも鋭い
公式ボールの素材:本革

ラグビーボール

重さ:400~440グラム
周囲の長さ(長い方):74,0cm〜77,0cm
周囲の長さ(短い方):58,0cm〜62,0cm
レース:レースがなくても可
形:両端の丸みはアメフトよりも丸みをおびている
公式ボールの素材:合成皮革(ラバー)

55

Xリーグに加盟するチーム数(X1:20、X2:19、X3:16)。

18

Xリーグの試合で使用するスタジアムの数。

13411

2022年シーズンX1総観客数

アメフトは、アメリカにおいて歴史のある野球を凌ぎ、いまもっとも人気があるスポーツとして君臨している。1985年にはNFLとMLBは、ほぼ同じ22~23%の人気だった。それから約30年後の2015年には、NFL 33%、MLB15%と大差が付いた。ビジネスとしても、NFL 133億ドルの売り上げに対し、MLB 95億ドルという数字がついてくる。

なぜこれほどまでに大きな成長を遂げたのか。

NFLは、「チーム戦力均衡の仕組みづくり」「チケット収入を確保するブラックアウト制度」「ゲームと親和性の高い放映権料の増加」などを取り入れ、全球団に公平な収益とチャンピオンへの挑戦権を与えた。

緻密な戦術、スピーディな試合展開、一発逆転を狙えるギャンブル的要素といった試合本来の楽しみに加え、ハーフタイムには素晴らしいショーを提供してくれる。

日本のXリーグの誕生は1996年。実業団とクラブチームがしのぎを削る戦いは、発足以降三度の変更を経てきた。 2019年から前年の上位8チームからなるX1 SUPERと、その下に位置するX1 AREA(EAST、CENTRAL、WEST)12チームの計20チームがX1リーグとなった。その結果、ライスボウル制覇までの全10試合は、実力伯仲の面白いゲームが増えてきている。

アメフトは大きなポテンシャルを秘めた競技だ。しかしながらXリーグが一足飛びにNFLのように成長することは難しい。そこで提案。長く野球に親しんできた日本人は、打率や本塁打、奪三振数といったスタッツを語ることには慣れているはずだ。よりスタッツに特化したアメフトの楽しみ方はないものか。

QBが獲得したパスヤードを語り合う、そんな月曜の朝があってもいい。

To Be Continued

次回は、「#005 デュアルキャリア」