Unicorn Athlete 003 Maho Segawa 

WEARING BRAND:BALMAIN / PHOTO:JUNJI HATA / VIDEO:ROBIN FURUYA / HAIR & MAKE:HIROKI Yoshimori

競技に⼈⽣や⻘春を賭けている選⼿たちが、社会から多くのサポートを得られるような「⽂化」を育てていきたい。そういった観点から個にフォーカスをあてる「ユニコーン・アスリート」。
社会人や学生と両立させながら活動するアスリート。マイナースポーツを世に広めようと頑張るアスリート。さまざまな背景や魅⼒を持つ彼らをファッションストーリーでヒモ解いていく。

第3回目は、『2020東京オリンピック』のフィールドに立った瀬川真帆(陸上ホッケー)。

「BALMAIN」を着てクールに。

「天真爛漫」。幼い頃のわたしを表す言葉はこれ。兄弟親戚も含めて男だらけの中で育ったから、イタズラはもちろん、木を燃やして遊んだり、あげく川で溺れたり、泥んこの幼少期を過ごした。小学校に入る前に1年間入院していたのは突発性ネフローゼ症候群のため。運動が長く禁止されていた期間もあり、解禁された2、3年生のころからは糸が切れた凧のようにあちこちを飛び回った。退院後の定期健診で会う車椅子姿の子を見ると、いまこうして歩くことができているのは、健康に産んでくれた母のおかげだと感謝したことを覚えている。

ユニフォーム提供:一般社団法人東京ヴェルディクラブ

スポーツに目覚めたきっかけは、家族や友達の影響からだ。小学校・中学校とさまざまなスポーツやダンスなどに興味を持ったが、どれも核になるものはなかった。

ホッケーとの出会いは、友達のお母さんから誘われて。そこで負けず嫌いの性格が功を奏し、活躍することの面白さを覚えた。結局6年生まで傍らながらホッケーを続けていた。ありがたかったのは、とくに誰からも強要はされなかったこと。「今日はちょっと行きたくないな」「秘密基地を作りたいな」と思ったら、練習は休み。これは、飽きっぽい性格の私が、長く続けられるように考えた母の策略かもしれない。そのおかげか、高校3年生になるとU-16、18の日本代表に入ることができた。初めての海外遠征で訪れたオーストラリアでは、日本と海外の文化や環境の違いを見ることにすごくワクワクしたことを覚えている。これを機に海外への探究心が一気に加速した。

大学への進学はホッケーのない学校を希望した。それは、ホッケー以外のことに興味が生まれたからだ。ただ、それを聞いた母はものすごく怒った。ある日顧問の先生に呼び出されて、また怒られるのかと思ったら『俺のために東京オリンピックに出て欲しい』その一言でホッケーを続けるためにソニーに就職した。そこからは毎日、会社のある愛知県稲沢市から岐阜県の練習場を往復する生活が7年間続いた。

東京オリンピック前に移籍した東京ヴェルディでも、仕事と競技を掛け持ちしているデュアルキャリアの選手は多い。全体で練習があるのは週末の2日だけで、あとは平日に1日あるかないか。毎日スティックでボールを触っていたのが最低週に2回となった。高校卒業時にホッケーを辞めるという気持ちがあった私だけど、いまでは貴重な時間として正面から向き合っている。その時間は自分の核にあるものに気付きやすいからだ。

アスリートとして、勝つために意識した生活、とくに食べる、寝る、ボディケアといったことに時間を割くことは大切かもしれない。でもそれと同様に意義があったと思うことは、働いてキャリアを続けてきたこと。いまでは大きなアドバンテージだと自信をもって言える。

東京オリンピック以前と以後では、「大人になったね」って言われる。それは多分仕事をしていたから。本当は人見知りだけど、いまは東京に出てきた影響もあって、そんな暇ねえぞって。今しか会えない人なんて何人でもいると思ったら、その人との時間で吸収できるものは、ひとつでも大事にしたいなって思うようになった。

幼少時から様々なことに興味のあった私は知らない世界を知る事が好きだ。2023年の私は今まで年齢やキャリアで無意識に諦めていた興味のあることに向き合っていきたいと考えている。私の好奇心旺盛な性格は昔から変わっていないのだと、そして強みだとおもう。

そしてもうひとつ、自然豊かな岩手県で育ったため環境問題や動物保護、そして自分と同じ立場の小児科の子や母子家庭の子に何かできることがないか日々考える。

SOSを送っている現場に向かって、見たことを伝え、寄り添うアプローチを考えたい。いまは、ご縁をいただいたアクセサリー屋さんとオリジナル商品を作り、その売り上げを動物保護や環境保全に寄付する計画を進めている。今後もたくさんの企業さんなどと繋がり、そんな活動をして世界を明るくしていきたい。

いろんな思いが交錯した競技人生だけど、オリンピックの舞台に立たせてくれたホッケーを続けさせてくれた環境や周囲の人たちには感謝しきれない。

そして、なにより頑張ってきた私には「ありがとう」って言ってあげたい。

さぁ、また頑張るよ、ワタシ。

Slogan

Unicorn Athlete was initiated by POD, aimed to support young athletes to pursue their passion in professional sports.

Profile

瀬川真帆(せがわ まほ)/ Hockey Player

1996年6月23日 岩手県生まれ
2015年県立沼宮内高校卒業後、ソニーHC BRAVIA Ladiesに入団。チーム国内3冠獲得に貢献するとともに、ホッケー日本リーグ最優秀新人賞を受賞。16年から日本A代表チームに選出。またジュニア日本代表チームメンバーとしてジュニアワールドカップに参加。17年には、スペイン1部リーグのレアルソシエダにレンタル移籍。チーム最高位となる準優勝に貢献。東京2020オリンピックにも出場。
現在は東京ヴェルディ女子ホッケーチーム所属。
好きなファッション:モード系、カジュアル系、コンサバ系
自身を表す漢字:「真」