Sweet Things - 余白を探す旅 - Episode 0「BLANC FUJI」 山中拓也
小さな出来事から生まれる物語は、どんな感性で捉えられていくのか。ローカルに馴染み、目の前にあるものを自分だけの色に染めていく。鳥のさえずり、川のせせらぎ、虫の息づかい…なぜか心の奥に引っ掛かるものを見つけたとき、その場所がグッと愛おしくなる。人は断片からなにを切り取るのだろうか。それぞれの「余白」を探す旅へ。
四季を感じながら富士山を望む
静謐な桂川のせせらぎを聴く
木や石のぬくもりに触れる
地元食材を使った食事に舌鼓を打つ
季節ごとに木々や草花が香る
自然と共生することで体感する「余白」。
そんな余白を思い思いに楽しみ、
五感で自然を感じる旅を。
(BLANC FUJI HPより)
自然との境界はいつも曖昧だ。河口湖と山中湖のちょうど中間に依拠する「BLANC FUJI」は、そんな距離感を諭すかのように創られている。
山中拓也が愛情を注いだおもちゃ箱は、不動産開発の定石を根底から見直したもの。建てることもなく、壊すこともない移動可能なコンテナ型ホテルという独自のアプローチは、大学時代から自然に魅せられ、地方創生を日本が誇る産業へと昇華させられると本気で信じているから。
富士の裾野はどのくらいの広さなのだろう。そもそもどこからどこまでが富士山なのか、明確に定義付することには諸説ある。ただエントランスに立ちその雄大な姿を眺めていると、すでにその一部に取り込まれてしまっていることに気づく。
レストランを抜け、歩を進めると、建築物に該当しない車両型宿泊施設が、これまでに入ることができなかったエリアに鎮座している。距離にして約100メートル。ここは、ほんの少しだけ人類が聖域に近づいた場所ということになる。
11棟に分かれるVILLAには、それぞれ出資者であるオーナーがいる。コンドミニアムホテルという形式を取ることで、事業規模のスケールを確保し、ビジネスとしての構造を作り上げていくことは、起業家として必定のことだ。
山中自身、起業前からこだわる「余白」という概念。ただしこの言葉には、富士の裾野面積や自然との境界線同様に明確な定義は存在しない。それを物語として紡いでいくのは、この地を間借りしていく通りすがりの住人たちだ。
そばを流れる桂川のせせらぎに耳を傾け、上流をたどるか、下流を目指すか。ここからの道案内は、後に委ねていくことにしよう。
Episode 1 「赤富士と姫とキュンとする光景/水口早香」につづく