Unicorn Athlete 007 Shiori Funamizu
競技に⼈⽣や⻘春を賭けている選⼿たちが、社会から多くのサポートを得られるような「⽂化」を育てていきたい。そういった観点から個にフォーカスをあてる「ユニコーン・アスリート」。
社会人や学生と両立させながら活動するアスリート。マイナースポーツを世に広めようと頑張るアスリート。さまざまな背景や魅⼒を持つ彼らをファッションストーリーでヒモ解いていく。
第7回目は、車いすテニスプレイヤー船水梓緒里
「N21」を纏いコートを駆ける。
車椅子とテニスと私
入院中に母が勧めてくれた「車椅子テニス」。それがいまの私のど真ん中にある。
もともとソフトボールやスキーなど、アクティブな競技が好きだったけど、車椅子でもスポーツができるなんて思ってもいなかった。
はじめは気持ち半分。リハビリ感覚というか、自分が車椅子だということを認められるようになるための手段に過ぎなかった。なかば強制的に連れてかれた全日本マスターズ選手権大会。そこで一心不乱にプレイする国枝慎吾選手の姿をみて、ものすごい衝撃を受けた。そこから気持ちが180度以上変わっていくのに時間はかからなかった。
競技として本格的に始めたのが15歳。ジュニアの大会で勝てるようになったことがきっかけだ。とくに2016年に国別対抗戦の日本代表に選ばれて海外の選手を見た時に、こんなにもかっこいいプレーができるんだ、彼らと仲良くなりたい、というピュアな気持ちが湧き上がってきた。
車椅子でできるスポーツは、ほかにもバスケやバトミントンなどがあるけれど、結局私にとってはテニスが一番難しく、思うようにできないもどかしさがあったから楽しかった。国枝選手と同じくらいに憧れたのがオランダのスターバー選手。プレースタイルだけでなく、雰囲気がすごくかっこいい。
16歳でシニアにあがると、海外遠征が多くなってきた。そこで感じたことはたくさん。アメリカやカナダのお店には必ず車椅子用のトイレがある。現地ではファットな人たちが電動車椅子に乗って生活しているから道路の幅も広いなって感じる。一方ヨーロッパに行くと、昔ながらの街並みをすごく大切にしているので、石畳や段差がそのまま残っている。でもその分みんながすごく優しい。日本でも手を差し伸べてくれる人はたくさんいるけど、欧米に比べるとまだまだ少ないと感じる。
やっぱり国民性なのかな。日本だと駅に行っても急いでいる人がいっぱいで声をかけづらい。でも自分も怪我する前までは、車椅子の人を見かけたときに声をかけたかと言ったら、全然そうじゃない。むしろあの人は、何で車椅子なんだろうとただ黙って見ているだけだった。
私たちはフラットな視点を持つべき。
テニスに関しては、車いすの選手と健常者の選手が一緒に出る『Newミックスダブルス』という大会がある。お互いがペアを組んでもいいし、健常者が車いすに乗ってもいい。パラスポーツを見ても「すごいな」で終わりなっちゃうことが多いけど、実際に車椅子でプレイして、選手と話してみると違った視点が生まれてくると思う。そうすれば日常生活でも、手を差し伸べるきっかけになるかもしれない。将来的にはそんなイベントとか大会を作っていきたいと考えている。
パラリンピックは、今後のテクノロジーの発展に大きく貢献していくと思う。そこに新たなビジネスのチャンスもあるかもしれない。大学でスポーツ産業を研究しているけど、日本では車のモーターを活用したり、いろんな企業が共同開発しているプログラムがたくさんある。それはすごく魅力的だし、そういった視点で見るとパラリンピックももっと楽しくなると思う。
パラリンピックで人類が進化する。
Slogan
Profile
船水梓緒里(ふなみず しおり)/車椅子テニスプレイヤー
千葉県我孫子市生まれ。2016年から本格的に競技を始める。18年日本人で唯一世界ジュニアマスターズに出場し、シングルス準優勝、ダブルス優勝。
好きなファッション:カジュアルスタイル
自身を表す漢字:「輝」